チベット舞踊(藏族)
「チベット舞踊」は中国チベット自治区にある民族舞踊の総称です。どの民族舞踊でも、その土地での暮らしざまがダンスに大きく影響しますが、チベット舞踊では「高地生活と信仰」が顕著にあらわれています。
高山地帯の厳しく、そして美しい自然環境に囲まれて、チベット仏教が信仰されている地域ですから、ダンスも自然と厳か(おごそか)に、かつ優美に、奔放と踊られます。
代表的なチベット舞踊には、「弦子舞」(シェンツー)、「鍋庄」(盆踊りのように丸い円をつくる踊り)、「踢踏」(タップダンス)があります。長い袖のある衣装をまとい、優雅に振る腕の動きや、腰のリズムが特徴的。
※2015年公演演目
吉祥の哈达(ハダ)
※2015年公演演目 「高原蓝」(高原ブルー)
※2014年発表会演目 「次仁拉索」 (ツーレンラソ) *ツーレンラソはチベット語で、長寿祝いを意味します。
弦子舞
弦子舞は芒康で唯一の現地の特徴ある民族歌舞である。祭日になると、人々は一箇所に集まり、伴奏しながら踊り出す一人もしくは複数の男子の後ろで、長い袖を振りながらぐるぐる回って舞い始める。芒康弦子舞は舞う姿がやわらかく、自由奔放かつスムーズで、拖歩(右足を一歩出した後左足を添える)・点歩(片足を外側に曲げてもう片方の足を延ばす)回転・袖振り・腰をひねって小刻みに体を震わせて歩くなどの動作があり、長い袖をたなびかせる点が一番の特徴である。演者は弦子の楽曲に合わせて「震え声」を発し、舞踊の動作にも「震え」を取り入れている。これらの動作の多くは善良で縁起がいい動物の姿や動作をまねたものであり、「孔雀の水飲み」・「喜んで跳ねるウサギ」などの分類がある。現存している芒康弦子には地域的な特色を有したいくつかの流派がある。例えば荘厳な塩井弦子舞・洒脱な徐中弦子舞・動きが難しくかろやかな索多西弦子舞・自由で開放的な曲鄧弦子舞などである。弦子舞踊隊はやわらかな弦楽器の音にあわせて、集まったり散じたり、列になって回ったり、袖をたなびかせて旋回したりするが、それらはいずれも文化的含蓄と美しさに富んでいる。
現在、芒康弦子舞は既に多くのチベット族の主要な娯楽になっており、芒康の16の郷(鎮)では、おめでたいことがあると、弦子舞を主とする様々な文芸活動を行っている。これらの活動は人々の精神文化生活を豊富かつ活発にし、文化素養を向上させ、祖国と故郷への愛を深める役割を果たしている。芒康弦子舞は歴史が長く、古くから伝わる珍しいものであり、独特の形式で民族的雰囲気・高原的な特色が色濃く、多くの流派があり、表現体系が整備されている。この歌舞の伝統は非常に貴重なものである。
「弦子」はチベット語で「嘎諧」と言い、またの名を「諧」・「葉」・「巴葉」などと言う。輪になって踊るという意味であり、チベット族の三大舞踊のひとつである。チベット東部および雲南・四川・青海のチベット族居住区に分布しており、四川巴塘弦子が最も有名である。巴塘県は四川・雲南・チベット三省(区)の境界にあり、古代には白狼国の地に属していた。白狼国の「白狼歌」は詩・音楽・舞踊を一体化させた儀礼的歌舞であり、巴塘弦子はその名残とされている。千年余りの変遷を経て、チベット族の人々に愛される民間歌舞に発展した。
巴塘弦子は優美で抒情的なチベット族舞踊であり、「長い袖を振って踊る」という特徴がある。踊るときは、数名の男性が弦楽器「卒旺」を持って隊列の前方で演奏して舞踊をリードする。その他の演者は彼らと一緒に歌ったり踊ったりする。
「三歩一撩(三回歩いた後に片方の足を前に出す)・一歩一靠(一歩ごとに体を傾ける)」は巴塘弦子舞の基本的なリズムの特徴であり、胸・膝や長い袖を回す・掌に載せる・まくる・覆うなどの動作は他とは異なる地域的な特色を有している。おめでたいことがあると、屋外での集会や労働の合間に、人々は「林卡」(林の中の空き地)や堤に集まり弦子舞を踊る。男女の区別はなく、人数の制限もない。弦子の音楽は通常、前奏・間奏・終曲部の3部分に分かれており、音楽はやわらかさの中にも強さがあり、優美かつ抒情的で、リズムは舞踊性に富んでいる。
巴塘弦子は巴塘の人々の知恵の結晶である。巴塘弦子舞の中には濃厚な民族文化があり、色濃い民族風情が映し出されている。学術的価値・芸術的価値共に非常に高い。2000年5月、文化部は巴塘県を正式に「中国民間芸術の郷」と命名した。数千曲の曲目がある巴塘弦子はチベット族民間音楽の最大の宝庫となっており、チベット族音楽のうち保存状態が最も良い「活きた化石」であり、その音楽と歌詞はいずれもチベット族の他の文学や芸術の中に沁みこんでいる。巴塘弦子の保護は、チベット族の歌舞芸術保護・チベット族の文化研究にとっていずれも大きな意義を持つものである。
出所:网络孔子学院